追従性眼球運動と跳躍性眼球運動とは? 家でできる練習とプリントの選び方

私たちの目は、起きているあいだ、ほとんど休まずに動き続けています。けれども、その動きを意識することは、ふだんほとんどありません。このコラムでは、目の動きの中でも特に大切な「目で追う動き」と「視線をパッと移す動き」の2つをご紹介します。専門の言葉では、それぞれ「追従性眼球運動」「跳躍性眼球運動」と呼ばれています。それぞれの動きが毎日のどんな場面で使われているのか、家でできる練習、そしてプリントの選び方まで、順にお話しします。
目の動きには、いくつかの種類がある
目の動き(眼球運動)には、いくつかの種類があります。たとえば、近くを見るときに両目を内側に寄せる動き(輻輳)や、体や頭が動いても見ているものから目が離れないようにする動き(前庭動眼反射)などです。この2つは、コラム「意外なところにも、見る力が関係している」でご紹介しています。
このコラムでは、次の2つの動きを取り上げます。
2つの目の動き
- 追従性眼球運動動くものを、目でなめらかに追いかける動き
- 跳躍性眼球運動見たい所へ、視線をパッと飛ばす動き
どちらも、見る力(視覚認知)の土台になる、大切な目の使い方です。見る力の全体については、コラム「見る力(視覚認知)とは」もあわせてご覧ください。
追従性眼球運動(ついじゅうせい がんきゅう うんどう)=目で追う動き
追従性眼球運動は、動いているものを、目でなめらかに追いかける動きです。「追従」は「あとについていく」という意味です。専門の場面では「追視」と呼ばれることもあります。
たとえば、こんな場面で使われています。
- 飛んでくるボールを目で追って、キャッチする
- 鬼ごっこで、走っている友だちを目で追う
- 先生が黒板の上で動かす指し棒の先を見る
- 自分で線を引くとき、動いていく鉛筆の先を見る
この動きは、目で追う「動くもの」があるときに、なめらかに働くのが特徴です。追うものが速すぎると、なめらかな動きでは追いつけず、ところどころパッと視線を飛ばして追いかけるようになります。
跳躍性眼球運動(ちょうやくせい がんきゅう うんどう)=パッと移す動き
跳躍性眼球運動は、見たい所へ、視線をパッと飛ばす動きです。「跳躍」は「跳ぶ」という意味で、目が次の場所へ跳ぶように動くことから、こう呼ばれています。専門の言葉では「サッカード」とも呼ばれます。
たとえば、こんな場面で使われています。
- 黒板とノートを、何度も見比べながら書き写す
- 本を読んで、行の終わりから次の行の頭へ目を移す
- たくさんの中から、目当てのものを探す
- 名前を呼ばれて、声のした方をパッと見る
実は、文章を読むときの目は、文字の上をなめらかに流れているわけではありません。少し止まっては次へ跳び、また止まっては次へ跳ぶ、ということをくり返しています。読むことは、跳躍性眼球運動のくり返しで支えられているのです(Rayner, 1998)。
2つの動きを比べると

| 追従性眼球運動(目で追う) | 跳躍性眼球運動(パッと移す) | |
|---|---|---|
| 動き方 | 動くものに合わせて、なめらかに | 次の場所へ、すばやく跳ぶように |
| 毎日の場面 | ボール遊び、動くものを見る、線を引くときに鉛筆の先を見る | 読む、書き写す、探す、見比べる |
| 苦手なときに見られやすい様子 | ボールを目で追えず、とり損ねやすい。動くものを追うと、すぐに目がそれる | 読むときに行や文字を飛ばす。書き写しに時間がかかる。探し物が見つからない |
ただし、表の「苦手なときに見られやすい様子」には、目の動きのほかにも、いろいろな理由が考えられます。この表は、お子さんの様子を見るときの「手がかりの一つ」として使ってください。
目の動きは、少しずつ育っていく
目を動かす基本的な力は、早い時期から育ち始めます。一方で、「ここを見よう」と自分で決めて目を動かす力や、見たくなっても目を動かさずにこらえる力は、時間をかけてゆっくり育っていくと報告されています(Luna ら, 2008)。
ですから、目の動きがまだぎこちなく見えても、あわてる必要はありません。その子なりのペースで育っていく力だと考えて、楽しみながら目を使う機会を増やしていけたらと思います。
家でできる練習
ふだんの遊びの中でも、目はたくさん動いています。ただ、目の動きの「練習」として取り組むなら、次の3つがそろっているものがおすすめです。
ここでは、この3つを大切にした練習をご紹介します。
目で追う動き(追従性眼球運動)の練習
- ペンの先の「好きなもの」を追いかける:ペンや割りばしの先に、その子が好きなキャラクターや動物のシール、小さな絵を貼ります。顔から30〜40cmくらい離して、左右・上下・斜め・円をえがくように、ゆっくり動かします。ただのペン先よりも「見たい!」という気持ちが生まれ、目で追い続けやすくなります。「〇〇が逃げるよ、見失わないでね」と声をかけたり、ときどき止めて指でタッチしてもらったりすると、遊びのように続けられます
- ゆれる振り子を目で追う:ひもの先に、小さなボールやマスコットをつるして、目の高さで左右にゆらします。ゆれの大きさで速さが変わるので、小さくゆっくりから始めて、少しずつ大きくしていきます。前後にゆらしたり、円をえがくように回したりすると、目の動かし方が変わります
- 光を追いかける:部屋を少し暗くして、大人が壁に懐中電灯の光を当て、ゆっくり動かします。子どもは光を目で追いかけます。慣れてきたら、子どもにも懐中電灯を持ってもらい、大人の光に自分の光を重ねたまま追いかけます。目で追う動きと、見ながら手を動かす力を一緒に使う練習になります
パッと移す動き(跳躍性眼球運動)の練習

- 2本のペンの「好きなもの」を見比べる:2本のペンの先に、それぞれ違うキャラクターのシールを貼り、肩幅くらいに離して持ちます。大人が名前を言った方を、パッと見ます。慣れてきたら、手拍子に合わせて左右を交互に見る、ペンの間を広げる、上下や斜めに持つ、と少しずつ変えていきます
- 左右の列を交互に読む:紙の左の端と右の端に、数字やひらがなを縦に1列ずつ書いて、壁に貼ります。少し離れて座り、「左の1つ目→右の1つ目→左の2つ目→右の2つ目…」と、左右を行き来しながら読み上げます。慣れてきたら、列を3列・4列に増やしたり、紙を大きくして間を広げたりします。文字がまだ読めない子は、数字やひらがなの代わりに、動物の絵や色のシールを並べて、名前や色を言ってもらいます
- 開いた手を見てタッチ:大人が両手をグーにして、子どもの前で左右に広げます。どちらかの手をパッと開いたら、子どもはその手を見て、すぐにタッチします。開く手の場所を上・下・斜めに変えたり、開く速さを上げたりすると、難しくなります

練習のコツ
- 子どもの目を見る:練習のあいだ、大人は目印ではなく子どもの目を見ます。目がとぎれる方向や、カクッと止まってしまう所が、その子にとって追いにくい所です。そこは、ゆっくり・小さな動きでくり返します
- 短い時間で:1つの練習は1〜2分くらいで十分です。いくつかの練習を組み合わせて、遊びのように進めます
- はじめは頭が動いてもOK:慣れてきたら、「顔はそのままで、目だけで見てみよう」と声をかけてみます
- ゆっくりから:はじめはゆっくり、小さな動きから始めます。上手になってきたら、少しずつ速く、大きくしていきます
- つらそうなときはやめる:目が疲れる、頭が痛い、気分が悪いといった様子があるときは、すぐに休みます
プリントの選び方
MIRU LAB KIDS のプリントは、課題によって、よく使う目の動きが違います。育てたい目の動きに合わせて、プリントを選んでみてください。
目で追う動き(追従性眼球運動)を使うプリント
パッと移す動き(跳躍性眼球運動)を使うプリント
- ナンバータッチ・ナンバータッチ(数字+ひらがな):散らばった数字や文字を、順番に目で探していく
- すうじさがし・もじさがし:行に沿って、左から右へ、上から下へと順に目を動かしながら探す
- てんつなぎ:次の数字を探しては、そこへ目を移す
- てんずうつし・えの てんずうつし・はんぶん ぬりえ:見本と自分の紙のあいだで、目を行き来させて見比べる
- じゅんばんを おぼえよう(かたち)・じゅんばんを おぼえよう(え):並んだものを、左から右へ順に目を移していく
どのプリントも、目の動きだけでなく、形を見分ける力や、目と手を一緒に使う力なども使います。「このプリントは、この目の動きだけ」というわけではないので、目安として使ってください。
迷ったときは、追う動きのプリントとパッと移す動きのプリントを、1枚ずつ組み合わせてみるのもおすすめです。1日の量や続け方については、コラム「毎日やったほうがいい? 1日どれくらい?」をご覧ください。
気をつけたいこと
目の動きの練習は、どなたでも気軽に始められます。ただ、練習をすれば必ず変化が見られる、というものではありません。
また、「行を飛ばして読む」「ボールをとり損ねる」といった様子には、目の動きのほかにも、視力や両目の使い方、注意の向け方、体の使い方など、さまざまな理由が考えられます。見ることについて気になる様子が続くときは、まず眼科で、視力や目の病気がないかを確かめてもらってください。そのうえで、学校や療育の先生、リハビリの専門職など、身近な専門家にも相談してみてください。
おわりに
目で追う動きと、パッと移す動き。どちらも、読む・書く・遊ぶといった毎日のいろいろな場面で、私たちを支えてくれています。
ふだんは気づきにくい目の動きですが、知っておくと、お子さんの様子を見るときの新しい手がかりになります。遊びやプリントを通して、楽しみながら目を使う時間を作っていただけたらうれしいです。
参考にした研究
- Rayner K. Eye movements in reading and information processing: 20 years of research. Psychological Bulletin. 1998;124(3):372-422.
- Luna B, Velanova K, Geier CF. Development of eye-movement control. Brain and Cognition. 2008;68(3):293-308.



