毎日やったほうがいい? 1日どれくらい? プリントを使うときの基本の考え方
「プリントは毎日やったほうがいいですか?」「1日に何枚くらいがいいですか?」「どれくらい続けたら、変化が見えてきますか?」
見る力のプリントを使うとき、こうした疑問を持つ方は多いと思います。このコラムでは、これまでの研究で行われてきた取り組み方も参考にしながら、プリントを使うときの基本の考え方をご紹介します。
先に結論をお伝えすると、「この量を、この期間やれば必ず変わる」という正解はありません。それでも、目安を考えるヒントはあります。
研究では、どれくらいの量で取り組まれてきた?
見る力を育てることをねらった取り組みについては、海外でいくつも研究が行われています。たとえば、次のようなものがあります。
- 発達がゆっくりな4〜6歳の子どもたちを対象にした研究では、見る力の課題に1回40分、週1回、14週間取り組みました。パソコンの課題だけでなく、紙の課題に取り組んだグループでも、見る力の検査の点数が上がり、何もしなかったグループでは変化が見られませんでした(Chen ら, 2013)。
- 脳性まひのある子どもたちを対象にした研究では、1回30分、週3回、8週間(合計24回)取り組み、目と手を一緒に使う力や、身の回りの動作の点数が上がったと報告されています(Cho ら, 2015)。ただし、この研究には比べるためのグループがありません。
- 両目を内側に寄せる力が弱い子どもたち(9〜17歳)を対象にした大きな研究では、専門家のもとでの訓練(週1回)に加えて、家で1回15分・週5回の練習を12週間続けました。目の寄せる力の変化がいちばん大きかったのは、最初の4週間でした(Scheiman ら, 2010)。
研究によって、対象の子どもも、取り組む内容も、量もさまざまです。それでも共通しているのは、1回は短めに、週に何回か、数週間〜3か月くらい続けて様子を見ていることです。
変化が見えるまでには、どれくらいかかる?
上の研究では、4週間〜14週間ほどで変化が報告されています。ただし、これは「平均すると変化があった」という話です。同じ研究の中でも、早く変化が見える子もいれば、ゆっくりな子も、あまり変化が見えない子もいます。
また、これらの研究の多くは、決まった子どもたちを対象に、専門家のもとで行われたものです。プリントを家や教室で使う場合に、同じ結果になるとは限りません。
見る力の育ち方は、本当に人それぞれです。数日や1〜2週間で「変わらない」と判断せず、数か月単位で、のんびり見守るくらいがちょうどいいと思います。
毎日やったほうがいい?
研究から言えることを合わせると、毎日でなくても大丈夫です。週に数回でも、続けることのほうが大切です。
勉強の研究では、同じ時間を使うなら、一度にまとめてやるよりも、何回かに分けたほうが身につきやすいことが知られています(分散学習)。1日にたくさんやるより、短い時間を何日かに分けるほうが、子どもにとっても続けやすいはずです。
1日どれくらいが目安?
MIRU LAB KIDS のプリントなら、1回1〜2枚、5〜15分くらいをひとつの目安にしてみてください。
いちばん大切なのは、「もう少しやりたい」と思えるところで終わることです。疲れてからも続けると、プリントそのものが嫌いになってしまうことがあります。集中できる時間は、子どもによっても、その日の調子によっても変わります。時間や枚数にこだわりすぎず、お子さんの様子を見て決めてください。
レベルの選び方
最初は、「少しがんばれば、自分でできる」くらいのレベルから始めるのがおすすめです。迷ったら、低いレベルから始めましょう。
- すらすらできて、時間も短くなってきたら、1つ上げてみる
- 何度も手が止まる、嫌がるようになったら、1つ下げてみる
難しすぎる課題は、失敗の経験ばかりが残ってしまいます。「できた!」という気持ちを大切にしながら、少しずつ難しくしていきましょう。
嫌がるとき・できないとき
嫌がる日は、無理にやらなくて大丈夫です。その日はお休みにするか、レベルを下げてみてください。
途中で止まってしまったときは、大人が少し手伝ってもかまいません。「次はどっちに行けそう?」と声をかけたり、指で一緒にたどったりしてみてください。
親子で一緒に取り組んでみる
プリントは、ひとりで黙々と取り組むだけのものではありません。おうちの方が一緒に取り組むと、楽しみながら続けやすくなるかもしれません。
- 同じプリントを2枚印刷して、親子で同時にやってみる
- 「こっちは3つ見つけたよ」「どっちが先にゴールできるかな?」と、ゲームのようにしてみる
- 子どもが先生役になって、おうちの方に解き方を教えてもらう
- 終わったあとに、答えを一緒に見ながら「ここ難しかったね」と話す
大人が楽しそうに取り組んでいる姿は、子どもにとって何よりの励みになります。勝ち負けや速さよりも、一緒に過ごす時間そのものを楽しんでください。
時間の記録は「前回の自分」と比べる
プリントの下には、かかった時間を書く欄があります。記録は、前回の自分と比べるために使ってください。ほかの子と比べる必要はありません。
時間が短くなったときはもちろん、時間がかかっても最後までできたときも、一緒に喜んであげてください。
いちばん大切にしてほしいこと
コラム「見る力(視覚認知)とは」でもお伝えしたとおり、見る力はプリントだけで伸ばすのは難しい力です。
体を動かす遊び、ほかの教材、毎日の生活の中のさまざまな経験。見る力は、そのすべての中で使われ、育っていきます。プリントは、その中の一つの道具として、楽しく、無理なく使っていただけたらうれしいです。
参考にした研究
- Chen YN, Lin CK, Wei TS, Liu CH, Wuang YP. The effectiveness of multimedia visual perceptual training groups for the preschool children with developmental delay. Research in Developmental Disabilities. 2013;34(12):4447-4454.
- Cho M, Kim D, Yang Y. Effects of visual perceptual intervention on visual-motor integration and activities of daily living performance of children with cerebral palsy. Journal of Physical Therapy Science. 2015;27(2):411.
- Scheiman M, et al. Vision therapy/orthoptics for symptomatic convergence insufficiency in children: treatment kinetics. Optometry and Vision Science. 2010;87(8):593-603.
- Cepeda NJ, Pashler H, Vul E, Wixted JT, Rohrer D. Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis. Psychological Bulletin. 2006;132(3):354-380.