意外なところにも、見る力が関係している

見る力というと、読む・書くといった勉強の場面を思い浮かべる方が多いと思います。けれども、見る力が使われているのは、机の上だけではありません。このコラムでは、「えっ、そこにも?」と思われるかもしれない場面を5つご紹介します。

見る力の中身(目を動かす力・両目で見る力・形や位置をとらえる力 など)については、コラム「見る力(視覚認知)とは」で詳しくご紹介しています。

1. 気持ちのコントロール

かんしゃくを起こしやすい。遊びから次の活動へ、なかなか切り替えられない。こうした様子は、気持ちの問題として見られることが多いと思います。

けれども、その裏で見る力が関係していることがあります。

一つは、疲れです。見ることが苦手な子は、ほかの子と同じことをするだけでも、目と頭をたくさん使っています。エネルギーを使い切って余裕がなくなると、ちょっとしたことでもイライラしやすくなります。大人でも、慣れない場所で細かい文字を読み続けたあとは、気持ちに余裕がなくなりますよね。

もう一つは、周りの様子のつかみにくさです。周りの人が何をしているのか、次に何が始まるのかを、私たちは目から多くの情報を得てつかんでいます。それがつかみにくいと、急に予定が変わったように感じて、不安になったり、驚いたりしやすくなります。

2. 疲れやすさ・集中が続かない

授業の途中で姿勢が崩れる。すぐに目をそらしたり、こすったりする。机に顔をとても近づけて作業する。こうした様子は、「やる気がない」「集中力がない」と受け取られがちです。

けれども、見ることそのものが負担になっていて、疲れが早く来ているのかもしれません。たとえば、両目の向きをそろえ続けることや、視線を行から行へ移し続けることが苦手だと、同じ時間の作業でも、ほかの子よりずっと疲れやすくなります。

3. 片付け・持ち物の管理

机の中や引き出しが、いつもごちゃごちゃしている。探し物が見つからない。忘れ物や、なくし物が多い。

たくさんの物の中から目当ての物を見つけるのは、実はかなり難しい「見る」作業です。物の形や色の違いを見分け、全体をもれなく目で探す力が必要になります。さらに、「どこに何を置いたか」を覚えておくのにも、見る力が使われています。

周りからはだらしなく見えても、本人は「探しても見つからない」状態で困っていることがあります。

4. 道順を覚える・迷子になりやすい

何度も通った道なのに、なかなか覚えられない。広いお店や施設で、迷子になりやすい。

道順を覚えるときには、目印になる建物や看板を見て覚え、それぞれの位置関係を頭の中で地図のようにつなげています。位置や向きをとらえる力や、見て覚える力が関係している場面です。

5. 運動・バランス

よく転ぶ、つまずく。ボールを受け取るのが苦手。階段の上り下りが、少しこわそう。

体のバランスは、目・耳の奥・体の感覚の3つから入る情報で保たれています。中でも目から入る情報は大きく、私たちは周りの景色を見て、自分の体がどれくらい傾いているのかを知っています。試しに目を閉じて片足で立ってみると、目を開けているときよりずっとふらつくはずです。

ボールを受け取るときには、飛んでくるボールを目で追い、両目で距離をつかみ、手を出すタイミングを合わせています。段差を上り下りするときも、段の高さや奥行きを目で正しくつかむ必要があります。

理学療法士として子どもの運動を見ていると、「体の動き」だと思っていた苦手さの裏に、「見ること」のつまずきが隠れていると感じる場面が少なくありません。

周りの大人にできること

こうした様子に気づいたとき、まずお願いしたいのは、叱る前に一度、「見ることが負担になっていないかな?」と考えてみることです。

そのうえで、たとえば次のような工夫ができます。

  • 物を減らす:机の上や棚、掲示物の量を減らすと、目当ての物を見つけやすくなります
  • 置き場所を決める:物の置き場所を決めて、写真や絵の目印を付けておきます
  • 見通しを示す:次に何をするのかを、短い言葉や絵で、分かりやすく示します
  • 休みをはさむ:目を使う作業のあいだに、体を動かす時間や、遠くを眺める時間を入れます

何でも「見る力のせい」にしない

ここでご紹介した様子には、見る力のほかにも、さまざまな理由が考えられます。体の使い方、感覚の受け取り方、気持ちの面、周りの環境など、いくつもの理由が重なっていることも少なくありません。

見る力は、お子さんを理解するための「たくさんある視点の一つ」として持っておいてください。気になることが続くときは、眼科や、かかりつけの医療機関、地域の相談窓口などに相談してみてください。

おわりに

見る力は、勉強だけでなく、気持ちや体の動き、毎日の生活の中にも深く関わっています。「困った行動」に見えるものの裏で、お子さん自身が困っていることもあります。

このコラムが、お子さんの「困っている」に気づく手がかりの一つになればうれしいです。

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