よく転ぶ子。足元だけでなく「見る力」と「注意」からも考えてみませんか

土の道で、地面に出た木の根を、子どもが運動靴で足を上げてまたごうとしている足元
※画像はイメージです

「何もない所で、よくつまずくんです」「走っていると、前に突っ込むように転んでしまう」転ぶことが多いと、「足が弱いのかな」「落ち着きがないのかな」と思われがちです。けれども、転ばずに歩いたり走ったりするには、足の力のほかにも、いくつもの力が必要です。このコラムでは、転び方の様子から手がかりを探し、見る力・注意・体のバランス(足の裏の感覚や足の指の働きも)から、周りの大人にできる工夫をご紹介します。

転ばずに歩くには、いくつもの力がいる

段差のある道を歩くとき、私たちは次のようなことを、ほとんど意識せずに行っています。

段差を越えるまで

  1. 見る少し先の地面を見て、段差や物をとらえる
  2. 気づく「ここに段差がある」と注意を向ける
  3. 見積もる段差の高さや、そこまでの距離をつかむ
  4. 動くちょうどよい所で、足を高く上げる
  5. 立て直すぐらついたら、すぐに体を立て直す

どこか一つでもうまくいかないと、転びやすくなります。「ちゃんと前を見て歩きなさい」と声をかけても変わらないのは、本人の気持ちだけでは解決しにくい所でつまずいていることがあるからです。

転び方から、手がかりを探す

転び方をよく見ると、どこでつまずいているのか、手がかりが見つかることがあります。

転び方の様子関係していそうなこと
段差や物に、よくつまずく足元を見られていない、段差の高さや距離をつかみにくい
人や物に、よくぶつかる横から来るものに気づきにくい、注意を向けられる範囲がせまい
つま先が地面にひっかかるつま先を上げる力、疲れ、足元への注意
走ると、前に突っ込むように転ぶ体の傾きに気づいて立て直す力(下の「体のバランス」で説明します)
でこぼこ道や坂道で、ふらつく足の裏で地面を感じる力、足の指で踏んばる力
遊びに夢中なときほど転ぶ注意の向け方(下の「注意」で説明します)

1つの転び方に、いくつかの理由が重なっていることも少なくありません。

見る力から考える

歩くとき、私たちは足元だけでなく、少し先の地面にも目を向けています。これから足を置く場所を、前もって見ておくためです。大人を調べた研究では、決められた場所に足を置きながら歩くとき、人は今足を置いている所ではなく、およそ2歩先を見ていることが分かっています。

目線がいつも足元ばかりだと、先にある段差に気づくのが遅れます。頭が前に出て、体が前に傾きやすくもなります。反対に、遠くや友だちばかり見ていると、足元の変化に気づけません。「少し先を見て、ときどき足元を確かめる」という目の動きが、転ばずに歩くことを支えています。

段差の高さや距離をつかむのにも、見る力が使われています。両目で見て奥行きをつかむ力や、床の模様と段差の境目を見分ける力です。同じ色の床が続く段差や、模様の多い床で転びやすい子は、段差の境目が見分けにくいのかもしれません。

見えていても、気づけていないことがある(注意)

ここで大切なのは、目に映っていることと、気づいていることは別だということです。目に映っていても、注意が向いていなければ、その段差や物は、本人にとって「ないのと同じ」になります。

よく知られた実験があります。バスケットボールのパスを数えている人の多くが、画面の中をゴリラの着ぐるみが横切っても、気づかなかったのです。目には映っていたはずなのに、パスを数えることに注意が向いていたため、見落としてしまいました。

子どもの転びやすさにも、同じことが起きています。

  • 楽しいときや急いでいるときほど、注意を向けられる範囲がせまくなりやすい(鬼ごっこに夢中で、足元のおもちゃに気づかない)
  • 気になる物があると、そちらに注意を取られる(走りながら友だちを見て、転ぶ)
  • 注意を切り替えるのが苦手だと、「前を見る」と「足元を見る」の行き来が遅れやすい

体のバランスから考える:倒れかけたとき、立て直せるか

体のバランスは、目・耳の奥(前庭)・体の感覚の3つから入る情報で保たれています。

バランスを保つ3つの情報

  1. 目周りの景色から、体の傾きや動きを知る
  2. 耳の奥(前庭)頭の傾きや、スピードの変化を感じとる
  3. 体の感覚足の裏や関節から、体の位置や重さのかかり方を知る

走っていると、前に突っ込むように転ぶ子

現場でよく見るのが、走っているうちに足が追いつかなくなり、前に突っ込むように転ぶ子です。

走るときは、前に倒れかけた体を、足を前に出して受け止め続けています。スピードが上がったり、体が前に傾きすぎたりすると、足を出すのが間に合わなくなります。下り坂や、はしゃいでいるときに多い転び方です。

左は転ばずに走れるとき。体の傾きに合わせて、体の重さの中心の近くに足が出る。右は前に突っ込んで転ぶとき。体が前に傾きすぎて、足を出すのが間に合わない
体が先に行って、足が追いつかないと、前に突っ込むように転ぶ

ここで働いているのが、耳の奥の前庭です。前庭は、体が傾いたことや、スピードが上がったことを感じとります。その情報をもとに、私たちは倒れる前に足を一歩出したり、体を起こしたりしています(立ち直り反応・ステップ反応)。前庭の働きがもう少し育つと、「倒れかけている」と早く気づけるようになり、倒れる前に立て直しやすくなると考えています。

前庭は、走っているときに見ている景色をぶらさない働き(前庭動眼反射)もしています。くわしくは、コラム「意外なところにも、見る力が関係している」の「動きながら見るための、目と耳のチームワーク」をご覧ください。

つま先がひっかかって転ぶ子

もう一つよく見るのが、つま先が地面にひっかかって転ぶ子です。

歩くときや走るときには、足を前に出すたびに、つま先を少し上げています。このつま先を上げる力(すねの前の筋肉)が弱めだったり、疲れてきて足が上がらなくなったりすると、地面にひっかかりやすくなります。走り始めは大丈夫でも、しばらくすると転び始める子は、疲れが関係しているかもしれません。

体を支える力(おなかやお尻まわり)が弱めで、体がぐらぐらすると、足をまっすぐ前に出しにくくもなります。筋肉の張りが弱め(低緊張)の子に、よく見られる様子です。

足の裏と足の指から考える:地面を感じて、踏んばる

バランスを保つ3つの情報のうち、見落とされやすいのが、足の裏の感覚です。

足の裏は、地面のかたさやでこぼこ、傾き、体の重さがどこにかかっているかを、いつも感じとっています。その情報をもとに、私たちは意識しないまま、姿勢を細かく直し続けています。足の裏から地面の様子がうまく伝わらないと、体が傾いたことに気づくのが遅れ、立て直しが間に合いにくくなります。

足の指も、大切な働きをしています。立っているときや歩くとき、足の指は地面を押さえて、体がぐらつかないように踏んばっています。足の指が地面にしっかりつかず、浮いたままになっていると、踏んばりがききにくくなります。地面をけって前に進む力も、足の指から伝わります。

左は足の指が床についている足。指で床を押さえて踏んばれる。右は足の指が浮いている足。指と床のあいだにすき間があり、踏んばりがききにくい
立っているとき、足の指が床についているかを見てみましょう
足の裏・足の指の働きうまく働きにくいと
地面のかたさ・でこぼこ・傾きを感じるでこぼこ道や坂道で、ふらつきやすい
体の重さのかかり方を感じる体の傾きに気づくのが遅れる
足の指で地面を押さえて、踏んばる立ち止まったときや、押されたときにぐらつく
足の指で地面をける歩き方や走り方が、ぺたぺたした感じになる

いつも靴をはいて、平らな床ばかりを歩いていると、足の裏や足の指を使う経験は少なくなりがちです。裸足で、いろいろな地面を歩く経験は、足の裏で地面を感じ、足の指で踏んばる力を育てる、よい機会になると考えています。

気をつけたいこと

転びやすさの理由は、一人ひとり違います。見る力や注意、体のバランスのほかに、体の大きさが急に変わったことなども関係します。

  • まず、視力に問題がないかを確かめてください
  • 急に転ぶようになった、転び方がいつもと違う、けがが多いときは、医療機関に相談してください
  • 体の動かし方の不器用さが、ほかの場面でも目立つときは、療育の先生やリハビリの専門職などに相談してみてください

子どものリハビリの分野では、体の動かし方の不器用さについて、国際的な手引き(推奨)がまとめられています。その中では、家・学校・遊びの中で実際に困っていることを大切に見ていくこと、そして練習も、できるようになりたい動きそのものに取り組むほうが、少ない時間で生活の中の動きにつながりやすいことが書かれています。転ばずに歩く・走る力も、机の上の練習だけでなく、毎日の遊びや外歩きの中で育っていきます。

転ぶことも、大切な経験

子どもは、転んで「痛い」と感じる経験から、たくさんのことを学んでいます。「ここは、すべりやすい」「急に向きを変えると、転ぶ」「下を見ないと、つまずく」。こうした経験が積み重なることで、自分で危ないことに気づき、気をつけて動く力(危険を予測する力)が育っていきます。

転ばせないように、大人が先回りして危ない物をすべて取り除いたり、いつも手を貸したりすると、こうした経験が増えにくくなります。転ばない環境を作るよりも、小さく転んで学べる経験を大切にしたいと考えています。もちろん、車道の近くや高い所など、大きなけがにつながる場面では、大人が守ってください。

転んだあとに、一緒に振り返る

転んだ経験が、なかなか次に生かされにくい子もいます。同じ場所で、同じように転ぶことをくり返す場合です。

そんなときは、落ち着いてから、大人と一緒に短く振り返ってみてください。

転んだあとの振り返り

  1. どこで「どこで転んだかな?」
  2. どうして「そのとき、どこを見ていた?」「急いでいた?」
  3. 次は「次は、どうしたら転ばないかな?」

大切なのは、本人が自分で気づけるように問いかけることです。「次はどうする?」と、次につながる言葉で終えられると、本人も前向きに受け止めやすくなります。本人が答えにくいときは、「段差があったね」「走っていたね」と、起きたことを短く言葉にするだけでも十分です。

周りの大人にできる工夫

足に合ったサイズの靴を選ぶ

子どもの足はすぐに大きくなるので、靴は成長を見こして、つい大きめのサイズを選びがちです。けれども、大きすぎる靴は、転びやすさにつながることがあります。

  • 靴の中で足がすべって、足の裏で地面を感じにくくなる
  • 脱げないように足の指を曲げて靴をつかむので、足の指が踏んばりに使えなくなる
  • つま先が余って、地面にひっかかりやすくなる
  • かかとが浮いて、歩き方が安定しにくくなる

靴を選ぶときは、次のようなところを確かめてみてください。

  • つま先に、5mm〜1cmくらいのゆとりがある(それより大きすぎない)
  • かかとの部分がしっかりしていて、かかとが靴の中で浮かない
  • マジックテープやひもで、足の甲をしっかり止められる
  • 子どもの足は成長が早いので、数か月ごとにサイズを確かめる

裸足で、いろいろな地面を歩く

  • 芝生・土・砂浜・畳など、かたさや感触のちがう地面を、裸足で歩いてみる
  • 家の中で、クッションや布団の上など、少しやわらかくて不安定な所を歩く
  • 足の指でタオルをたぐり寄せる、小さなおもちゃをつかむ、足でじゃんけんをする

外を裸足で歩くときは、ガラスや石などの危ない物がないか、地面が熱すぎないかを、先に大人が確かめてください。靴下のままだと床ですべりやすいので、家の中では裸足のほうが安心な場合もあります。

体を使う遊び

  • ブランコ・トランポリン・すべり台など、揺れる・跳ぶ・回る遊び(前庭への刺激になります)
  • 坂道を、ゆっくり上ったり下りたりする
  • ケンケンパや、線の上を歩く遊び(足を置く場所を見て決める練習になります)
  • 「よーい、ストップ!」で止まる遊び(スピードを調整する練習になります)

遊びは、本人が楽しめる範囲で、少しずつで大丈夫です。こわがる子には、低い所や、ゆっくりした動きから始めてみてください。

つながるプリント

プリントは、机の上で見る力や注意を使う取り組みです。転ばなくなることを目的にするものではありませんが、「目で探す」「必要な所に注意を向ける」経験を、落ち着いた場面で重ねることができます。

1日の量や続け方については、コラム「毎日やったほうがいい? 1日どれくらい?」をご覧ください。

おわりに

よく転ぶのは、本人の不注意や足の弱さだけが理由とは限りません。見る力、注意、体のバランス、足の裏や足の指のどこかで、がんばってもうまくいかない所があるのかもしれません。

どこでつまずいているのかが分かると、「前を見て」のほかにも、できる工夫が見えてきます。そして、転ぶこと自体も、子どもにとっては大切な学びの機会です。このコラムが、お子さんの転び方を見るときの、新しい手がかりになればうれしいです。

参考にした研究

  • Patla AE, Vickers JN. How far ahead do we look when required to step on specific locations in the travel path during locomotion? Experimental Brain Research. 2003;148(1):133-138.
  • Simons DJ, Chabris CF. Gorillas in our midst: sustained inattentional blindness for dynamic events. Perception. 1999;28(9):1059-1074.
  • Blank R, Barnett AL, Cairney J, et al. International clinical practice recommendations on the definition, diagnosis, assessment, intervention, and psychosocial aspects of developmental coordination disorder. Developmental Medicine & Child Neurology. 2019;61(3):242-285.
  • Peterka RJ. Sensorimotor integration in human postural control. Journal of Neurophysiology. 2002;88(3):1097-1118.

ほかのコラム