見落としが多い子。「よく見て」の前に、どんな見落とし方かを見てみませんか

床に広げたたくさんのブロックの中から、子どもの手が赤い部品を選び出している。横の木のトレーには、同じ形の赤い部品が集めてある
※画像はイメージです

プリントの問題を1つ飛ばしてしまう。書き写しで、1文字だけ抜けている。探している物が目の前にあるのに、「ない」と言う。見落としが続くと、つい「よく見て」と声をかけたくなります。

けれども、見落としにはいくつかの種類があります。どこで、どんなふうに見落としているかによって、手伝い方も変わってきます。このコラムでは、たくさんの中から決められたものを探して印をつける「抹消課題」を手がかりに、見落とし方から分かること、まわりの刺激との付き合い方、そして自分に合う「見落とさない方法」の見つけ方をご紹介します。

「探す」は、いくつかの力の組み合わせ

紙の上で決められた数字を探すとき、頭の中では、いくつかの力を順番に使っています。

1つの数字を見つけるまで

  1. 覚える見本の数字の形を、頭の中に置いておく
  2. 順に見る左から右へ、上の行から下の行へと、目を動かしていく
  3. 見比べる見えた数字が、見本と同じかどうかを確かめる
  4. 続ける最後の1つまで、気持ちをそらさずに探す
  5. 確かめる見つけた数と、見つける数が合っているかを確かめる

探しやすさは、まわりに何が並んでいるかでも大きく変わります。たとえば、黒い数字の中に赤い数字が1つだけあれば、ぱっと目に飛びこんできます。ところが、3を探すときに8がたくさんまざっていると、1つずつ見比べないと見つけられません。大人を対象にした研究でも、色のように1つの特徴だけで見分けられるときは、並んだ数が増えても探す時間はほとんど変わらないのに対して、いくつかの特徴を組み合わせて見分けるときは、数が増えるほど時間がかかることが分かっています。

似たものの中から探すのは、それだけで手間のかかる作業です。見落としがあっても、それは「見ていない」のではなく、手間のかかる作業の途中で起きていることが多いのです。

見落とし方から分かること

終わったプリントは、見つけた数だけでなく、どこを、どんなふうに見落としたかも見てみてください。よく見られる見落とし方を、6つにまとめました。

数字が並んだ紙の上で、右はしだけ残る・行をまるごと飛ばす・似た数字に○をつける・後半ほど見落としが増える・あちこち飛んで同じ所を何度も見る・速く終わるが見落としが多い、の6つの見落とし方を示した図
見落とし方の6つの例(赤い点線の丸が見落とした所)
見落とし方考えられること試せる工夫
① 紙の片側だけ残る見る範囲が、紙の真ん中や片側に寄っている始める前に、紙の四すみを指でさわって、探す範囲を確かめる
② 行をまるごと飛ばす行の終わりから、次の行のはじめへ移るのが難しい定規や紙を行の下にあてて、1行ずつずらしていく
③ 似た数字に○をつける形の細かいちがいを見比べるのが難しい見本の形を言葉にする(「8は まるが 2つ」)
④ 後半ほど増える探し続けるうちに、気持ちがそれていく紙を半分に折って、前半と後半に分ける
⑤ あちこち飛ぶ探す順番が決まっていない「左上から」と、始める場所と向きを決める
⑥ 速いが見落としが多い速く終わらせることが目当てになっている終わったら、見つけた数を自分で数えてから「おわり」にする

①は紙の右はしや下のほうなど、いつも同じ所で見落としていないかを見ます。④は、前半と後半で見落としの数を比べると分かりやすくなります。1回のプリントだけで決めず、何回か続けて見ると、その子の見落とし方の「くせ」が見えてきます。

「順番に探す」は、少しずつ整っていく

⑤の「あちこち飛ぶ」探し方は、小さい子ほどよく見られます。

同じ紙の上で、印をつけた順に線で結んだ2つの道すじ。左はあちこちに飛んで線が何度も交わり、右は左上から行ごとに順に進んでいる
印をつけた順に線で結ぶと、探し方が見えてくる

子どもに、りんごの絵を探して印をつける抹消課題をしてもらい、印をつけた順番を記録した研究があります。成長とともに、あちこちに飛ぶ探し方から、行や列にそって順に探す探し方へと、少しずつ整っていくことが分かりました。そして、順に探せる子ほど、似た絵がまざった中での見落としが少ない傾向がありました。

つまり、見落としを減らす手がかりの1つは、探す順番にあります。お子さんが印をつけるときに、つける順番を後ろから見ておくと、探し方がよく分かります。プリントに番号を小さく書いてもらうのも、一つの方法です。

子どものリハビリでも使われる「抹消課題」

抹消課題は、子どものリハビリや心理の分野で、注意と探し方を確かめる検査にも使われています。WISC(ウィスク)と呼ばれる子どもの知能検査の中にも、たくさんの絵の中から決められた絵に印をつけていく「絵の抹消」という検査があります。

子どもの注意を調べる検査(TEA-Ch)を作った研究では、6歳から16歳の子どもの結果から、注意を次の3つに分けて考えるとうまく説明できることが示されました。

  • 選んで向ける注意:たくさんの中から、目当てのものに注意を向ける
  • 続ける注意:同じことに、注意を向け続ける
  • 切りかえる注意:やることが変わったときに、注意を切りかえる

さきほどの見落とし方でいうと、③の「似た数字に○をつける」は形の見分けと選んで向ける注意、④の「後半ほど増える」は続ける注意とつながっています。同じ「見落とし」でも、どの注意が関係していそうかを考えると、手伝い方を選びやすくなります。

不注意が目立つ子(ADHD など)と、まわりの刺激

ADHD(注意欠如・多動症)のある子では、見落としが目立つことがよくあります。ADHD のある男の子を4年間追った研究では、成長とともに、多動や衝動的なふるまいは目立たなくなっていく一方で、不注意は残りやすいという結果が出ています。なお、見落としが多いからといって、それだけで ADHD かどうかが決まるわけではありません。診断はお医者さんが、生活全体の様子から行います。

不注意が目立つ子の中には、プリントの中だけでなく、プリントに取り組んでいるあいだに、まわりの音や動くものにも気持ちがそれやすい子がいます。放課後等デイサービスでも、窓の外を通る車や、となりの子の話し声に、そのつど顔を上げる子に出会います。

そんなときは、その子がどんな刺激に反応しやすいかを見てみてください。

反応しやすい刺激環境の整え方の例
見えるもの(動く人、壁の掲示物、机の上の物)壁に向かって座る、窓に背を向ける、机の上はプリントと鉛筆だけにする
聞こえる音(話し声、テレビ、物音)静かな部屋や時間を選ぶ、イヤーマフを使ってみる

どの刺激が気になるかは、子どもによって違います。イヤーマフが合う子もいれば、耳がふさがる感じのほうが気になる子もいます。いくつか試しながら、その子に合う減らし方を探していくのがおすすめです。

自分に合う「見落とさない方法」を見つける

注意の力そのものを育てるのは、簡単なことではありません。だからこそ大切にしたいのが、「どうしたら、自分は見落としが減るか」を、子ども自身が見つけていくことです。

探しながら使える方法

抹消課題では、ただ探すだけでなく、探しながら頭を使う方法がいくつもあります。

  • 探す数字を、小さく声に出しながら探す
  • 終わった行の左はしに、小さく印をつける
  • 指や定規で、今見ている所をたどる
  • 見つけるたびに、見本の横の点を1つずつ消す
  • 終わったら、見つけた数を数えて、見つける数と比べる

どの方法が合うかは、子どもによって違います。大人が1つに決めるよりも、いくつか試して「どれがやりやすかった?」と聞いてみてください。

自分で見つけて、自分で直す

見落としがあったとき、大人が先に「ここ」と指さすと、その場では正解になります。けれども、子どもの中に残るのは「教えてもらった」という経験です。「この行に、あと1つ」のように範囲だけを伝えて、もう一度自分で探してもらうと、自分で見つけて直せたという経験が残ります。

子どものリハビリ(作業療法)でも、子どもが「目標を決める → どうやるか考える → やってみる → うまくいったか確かめる」をくり返しながら、自分に合うやり方を見つけていく方法(CO-OP)があります。ADHD のある子を対象にした研究のまとめでも、自分の取り組みを自分で記録したり確かめたりする方法で、課題に向かう時間や正確さがよくなったという報告があります。

終わったあとは、短く振り返ってみてください。

振り返りのことばの例

  • 終わったときどこで みおとしやすかった?答えが出なくても大丈夫です。紙を一緒に見ながら聞きます
  • 次の前につぎは どうやって さがす?子どもが自分で決めた方法を、次の1枚で試します
  • うまくいったときどの やりかたが よかった?うまくいった方法を、言葉にしておきます

ゆくゆくは、自分で選べるように

見落としやすさや、気持ちがそれやすい刺激は、大人になっても続くことがあります。目指したいのは、見落としをゼロにすることではなく、自分の傾向を知って、自分で工夫を選べるようになることです。

「音が気になるから、イヤーマフをつけよう」「後半は見落としやすいから、最後にもう1回見直そう」こんなふうに、自分で決めて、自分でコントロールできることが増えていくと、プリントの外でも役に立ちます。はじめは大人が一緒に考え、少しずつ子どもが選ぶ場面を増やしていくのがおすすめです。

時間を測るときは、見落としの数も一緒に

かかった時間を記録すると、変化が目に見えて、励みになります。ただ、時間だけを記録していると、速く終わらせることが目当てになり、⑥のように見落としが増えることがあります。時間を測るときは、見落としの数と使った方法も一緒に書いておくのがおすすめです(記入例)。

日にちレベル時間見落とし使った方法・気づいたこと
11/332:103右はしで2つ。後半に多い
11/532:401終わった行に印。少し時間がかかった
11/932:200印をつける方法を自分で選んだ
11/1231:551定規も試した。「印のほうがいい」

この例では、印をつける方法にした日は時間が少しのびましたが、見落としが減っています。時間が短くなることだけでなく、見落としが減ったこと、自分で方法を選べたことも、大切な変化です。

時間の記録には、記録用紙の「タイムの きろく」が使えます。用紙には見落としの欄がないので、見落としの数は日付の横に小さく書き添えるか、上の表のようにノートに書いておくと、あとで見返しやすくなります。

プリントのほかにできること

探す力は、紙の外でもたくさん使っています。

  • ブロックやおもちゃの山から、同じ部品を全部集める:集め終わったら数を数えて、見落としがないか確かめます
  • 本棚から、決まった色の背表紙の本を探す:上の段から順に、指でたどりながら探します
  • 買い物で、メモの品物を探す:見つけたらメモに印をつけます。自分で確かめる練習にもなります

プリントの選び方

MIRU LAB KIDS には、抹消課題として使えるプリントがあります。

プリント探すもの特徴
すうじさがし決められた数字行と列にそろって並ぶ。3と8のような似た数字の見分けもねらう
もじさがし決められたひらがなすうじさがしと同じやり方で、形の種類が多い
ナンバータッチ1、2、3…と順に数字数字が紙いっぱいにばらばらに置かれ、紙のあちこちを見渡して探す

見落とし方の②(行を飛ばす)が気になるときは、行ごとに帯がある「すうじさがし」のレベル1・2から。⑤(あちこち飛ぶ)が気になるときは、まず「すうじさがし」で順に探す練習をしてから、「ナンバータッチ」で紙全体を見渡すのもおすすめです。

目の動かし方については、コラム「追従性眼球運動と跳躍性眼球運動とは?」、1日の量の目安は「毎日やったほうがいい? 1日どれくらい?」でご紹介しています。

おわりに:好きなことへの集中は、得意の芽

見落としが多い子が、好きなことにはぐっと集中して、声をかけても気づかないほど夢中になることがあります。大人を対象にした研究でも、ADHD のある人は、ない人に比べて、興味のあることに深く集中する「過集中」を経験すると答えることが多かったと報告されています。

注意が向きにくい場面がある一方で、注意がぐっと向く場面もある。見落としを減らす工夫と一緒に、その子が夢中になれることも大切にしていくと、それがいつか得意につながっていくかもしれません。

「よく見て」の前に、どんな見落とし方かを見てみる。そして、どうしたら見落としが減るかを、お子さんと一緒に探してみる。1枚のプリントが、そのきっかけになればうれしいです。

参考にした研究

  • Treisman AM, Gelade G. A feature-integration theory of attention. Cognitive Psychology. 1980;12(1):97-136.
  • Woods AJ, Göksun T, Chatterjee A, Zelonis S, Mehta A, Smith SE. The development of organized visual search. Acta Psychologica. 2013;143(2):191-199.
  • Manly T, Anderson V, Nimmo-Smith I, Turner A, Watson P, Robertson IH. The differential assessment of children's attention: the Test of Everyday Attention for Children (TEA-Ch), normative sample and ADHD performance. Journal of Child Psychology and Psychiatry. 2001;42(8):1065-1081.
  • Biederman J, Mick E, Faraone SV. Age-dependent decline of symptoms of attention deficit hyperactivity disorder: impact of remission definition and symptom type. American Journal of Psychiatry. 2000;157(5):816-818.
  • Polatajko HJ, Mandich AD, Missiuna C, Miller LT, Macnab JJ, Malloy-Miller T, Kinsella EA. Cognitive orientation to daily occupational performance (CO-OP): part III—the protocol in brief. Physical & Occupational Therapy in Pediatrics. 2001;20(2-3):107-123.
  • Reid R, Trout AL, Schartz M. Self-regulation interventions for children with attention deficit/hyperactivity disorder. Exceptional Children. 2005;71(4):361-377.
  • Hupfeld KE, Abagis TR, Shah P. Living "in the zone": hyperfocus in adult ADHD. ADHD Attention Deficit and Hyperactivity Disorders. 2019;11(2):191-208.

参考にした資料

  • 日本版WISC-IV刊行委員会(訳編). 日本版WISC-IV知能検査. 日本文化科学社; 2010.

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