見落としが多い子。「よく見て」の前に、どんな見落とし方かを見てみませんか

プリントの問題を1つ飛ばしてしまう。書き写しで、1文字だけ抜けている。探している物が目の前にあるのに、「ない」と言う。見落としが続くと、つい「よく見て」と声をかけたくなります。
けれども、見落としにはいくつかの種類があります。どこで、どんなふうに見落としているかによって、手伝い方も変わってきます。このコラムでは、たくさんの中から決められたものを探して印をつける「抹消課題」を手がかりに、見落とし方から分かること、まわりの刺激との付き合い方、そして自分に合う「見落とさない方法」の見つけ方をご紹介します。
「探す」は、いくつかの力の組み合わせ
紙の上で決められた数字を探すとき、頭の中では、いくつかの力を順番に使っています。
1つの数字を見つけるまで
- 覚える見本の数字の形を、頭の中に置いておく
- 順に見る左から右へ、上の行から下の行へと、目を動かしていく
- 見比べる見えた数字が、見本と同じかどうかを確かめる
- 続ける最後の1つまで、気持ちをそらさずに探す
- 確かめる見つけた数と、見つける数が合っているかを確かめる
探しやすさは、まわりに何が並んでいるかでも大きく変わります。たとえば、黒い数字の中に赤い数字が1つだけあれば、ぱっと目に飛びこんできます。ところが、3を探すときに8がたくさんまざっていると、1つずつ見比べないと見つけられません。大人を対象にした研究でも、色のように1つの特徴だけで見分けられるときは、並んだ数が増えても探す時間はほとんど変わらないのに対して、いくつかの特徴を組み合わせて見分けるときは、数が増えるほど時間がかかることが分かっています。
似たものの中から探すのは、それだけで手間のかかる作業です。見落としがあっても、それは「見ていない」のではなく、手間のかかる作業の途中で起きていることが多いのです。
見落とし方から分かること
終わったプリントは、見つけた数だけでなく、どこを、どんなふうに見落としたかも見てみてください。よく見られる見落とし方を、6つにまとめました。

| 見落とし方 | 考えられること | 試せる工夫 |
|---|---|---|
| ① 紙の片側だけ残る | 見る範囲が、紙の真ん中や片側に寄っている | 始める前に、紙の四すみを指でさわって、探す範囲を確かめる |
| ② 行をまるごと飛ばす | 行の終わりから、次の行のはじめへ移るのが難しい | 定規や紙を行の下にあてて、1行ずつずらしていく |
| ③ 似た数字に○をつける | 形の細かいちがいを見比べるのが難しい | 見本の形を言葉にする(「8は まるが 2つ」) |
| ④ 後半ほど増える | 探し続けるうちに、気持ちがそれていく | 紙を半分に折って、前半と後半に分ける |
| ⑤ あちこち飛ぶ | 探す順番が決まっていない | 「左上から」と、始める場所と向きを決める |
| ⑥ 速いが見落としが多い | 速く終わらせることが目当てになっている | 終わったら、見つけた数を自分で数えてから「おわり」にする |
①は紙の右はしや下のほうなど、いつも同じ所で見落としていないかを見ます。④は、前半と後半で見落としの数を比べると分かりやすくなります。1回のプリントだけで決めず、何回か続けて見ると、その子の見落とし方の「くせ」が見えてきます。
「順番に探す」は、少しずつ整っていく
⑤の「あちこち飛ぶ」探し方は、小さい子ほどよく見られます。

子どもに、りんごの絵を探して印をつける抹消課題をしてもらい、印をつけた順番を記録した研究があります。成長とともに、あちこちに飛ぶ探し方から、行や列にそって順に探す探し方へと、少しずつ整っていくことが分かりました。そして、順に探せる子ほど、似た絵がまざった中での見落としが少ない傾向がありました。
つまり、見落としを減らす手がかりの1つは、探す順番にあります。お子さんが印をつけるときに、つける順番を後ろから見ておくと、探し方がよく分かります。プリントに番号を小さく書いてもらうのも、一つの方法です。
子どものリハビリでも使われる「抹消課題」
抹消課題は、子どものリハビリや心理の分野で、注意と探し方を確かめる検査にも使われています。WISC(ウィスク)と呼ばれる子どもの知能検査の中にも、たくさんの絵の中から決められた絵に印をつけていく「絵の抹消」という検査があります。
子どもの注意を調べる検査(TEA-Ch)を作った研究では、6歳から16歳の子どもの結果から、注意を次の3つに分けて考えるとうまく説明できることが示されました。
- 選んで向ける注意:たくさんの中から、目当てのものに注意を向ける
- 続ける注意:同じことに、注意を向け続ける
- 切りかえる注意:やることが変わったときに、注意を切りかえる
さきほどの見落とし方でいうと、③の「似た数字に○をつける」は形の見分けと選んで向ける注意、④の「後半ほど増える」は続ける注意とつながっています。同じ「見落とし」でも、どの注意が関係していそうかを考えると、手伝い方を選びやすくなります。
不注意が目立つ子(ADHD など)と、まわりの刺激
ADHD(注意欠如・多動症)のある子では、見落としが目立つことがよくあります。ADHD のある男の子を4年間追った研究では、成長とともに、多動や衝動的なふるまいは目立たなくなっていく一方で、不注意は残りやすいという結果が出ています。なお、見落としが多いからといって、それだけで ADHD かどうかが決まるわけではありません。診断はお医者さんが、生活全体の様子から行います。
不注意が目立つ子の中には、プリントの中だけでなく、プリントに取り組んでいるあいだに、まわりの音や動くものにも気持ちがそれやすい子がいます。放課後等デイサービスでも、窓の外を通る車や、となりの子の話し声に、そのつど顔を上げる子に出会います。
そんなときは、その子がどんな刺激に反応しやすいかを見てみてください。
| 反応しやすい刺激 | 環境の整え方の例 |
|---|---|
| 見えるもの(動く人、壁の掲示物、机の上の物) | 壁に向かって座る、窓に背を向ける、机の上はプリントと鉛筆だけにする |
| 聞こえる音(話し声、テレビ、物音) | 静かな部屋や時間を選ぶ、イヤーマフを使ってみる |
どの刺激が気になるかは、子どもによって違います。イヤーマフが合う子もいれば、耳がふさがる感じのほうが気になる子もいます。いくつか試しながら、その子に合う減らし方を探していくのがおすすめです。
自分に合う「見落とさない方法」を見つける
注意の力そのものを育てるのは、簡単なことではありません。だからこそ大切にしたいのが、「どうしたら、自分は見落としが減るか」を、子ども自身が見つけていくことです。
探しながら使える方法
抹消課題では、ただ探すだけでなく、探しながら頭を使う方法がいくつもあります。
- 探す数字を、小さく声に出しながら探す
- 終わった行の左はしに、小さく印をつける
- 指や定規で、今見ている所をたどる
- 見つけるたびに、見本の横の点を1つずつ消す
- 終わったら、見つけた数を数えて、見つける数と比べる
どの方法が合うかは、子どもによって違います。大人が1つに決めるよりも、いくつか試して「どれがやりやすかった?」と聞いてみてください。
自分で見つけて、自分で直す
見落としがあったとき、大人が先に「ここ」と指さすと、その場では正解になります。けれども、子どもの中に残るのは「教えてもらった」という経験です。「この行に、あと1つ」のように範囲だけを伝えて、もう一度自分で探してもらうと、自分で見つけて直せたという経験が残ります。
子どものリハビリ(作業療法)でも、子どもが「目標を決める → どうやるか考える → やってみる → うまくいったか確かめる」をくり返しながら、自分に合うやり方を見つけていく方法(CO-OP)があります。ADHD のある子を対象にした研究のまとめでも、自分の取り組みを自分で記録したり確かめたりする方法で、課題に向かう時間や正確さがよくなったという報告があります。
終わったあとは、短く振り返ってみてください。
振り返りのことばの例
- 終わったときどこで みおとしやすかった?答えが出なくても大丈夫です。紙を一緒に見ながら聞きます
- 次の前につぎは どうやって さがす?子どもが自分で決めた方法を、次の1枚で試します
- うまくいったときどの やりかたが よかった?うまくいった方法を、言葉にしておきます
ゆくゆくは、自分で選べるように
見落としやすさや、気持ちがそれやすい刺激は、大人になっても続くことがあります。目指したいのは、見落としをゼロにすることではなく、自分の傾向を知って、自分で工夫を選べるようになることです。
「音が気になるから、イヤーマフをつけよう」「後半は見落としやすいから、最後にもう1回見直そう」こんなふうに、自分で決めて、自分でコントロールできることが増えていくと、プリントの外でも役に立ちます。はじめは大人が一緒に考え、少しずつ子どもが選ぶ場面を増やしていくのがおすすめです。
時間を測るときは、見落としの数も一緒に
かかった時間を記録すると、変化が目に見えて、励みになります。ただ、時間だけを記録していると、速く終わらせることが目当てになり、⑥のように見落としが増えることがあります。時間を測るときは、見落としの数と使った方法も一緒に書いておくのがおすすめです(記入例)。
| 日にち | レベル | 時間 | 見落とし | 使った方法・気づいたこと |
|---|---|---|---|---|
| 11/3 | 3 | 2:10 | 3 | 右はしで2つ。後半に多い |
| 11/5 | 3 | 2:40 | 1 | 終わった行に印。少し時間がかかった |
| 11/9 | 3 | 2:20 | 0 | 印をつける方法を自分で選んだ |
| 11/12 | 3 | 1:55 | 1 | 定規も試した。「印のほうがいい」 |
この例では、印をつける方法にした日は時間が少しのびましたが、見落としが減っています。時間が短くなることだけでなく、見落としが減ったこと、自分で方法を選べたことも、大切な変化です。
時間の記録には、記録用紙の「タイムの きろく」が使えます。用紙には見落としの欄がないので、見落としの数は日付の横に小さく書き添えるか、上の表のようにノートに書いておくと、あとで見返しやすくなります。
プリントのほかにできること
探す力は、紙の外でもたくさん使っています。
- ブロックやおもちゃの山から、同じ部品を全部集める:集め終わったら数を数えて、見落としがないか確かめます
- 本棚から、決まった色の背表紙の本を探す:上の段から順に、指でたどりながら探します
- 買い物で、メモの品物を探す:見つけたらメモに印をつけます。自分で確かめる練習にもなります
プリントの選び方
MIRU LAB KIDS には、抹消課題として使えるプリントがあります。
| プリント | 探すもの | 特徴 |
|---|---|---|
| すうじさがし | 決められた数字 | 行と列にそろって並ぶ。3と8のような似た数字の見分けもねらう |
| もじさがし | 決められたひらがな | すうじさがしと同じやり方で、形の種類が多い |
| ナンバータッチ | 1、2、3…と順に数字 | 数字が紙いっぱいにばらばらに置かれ、紙のあちこちを見渡して探す |
見落とし方の②(行を飛ばす)が気になるときは、行ごとに帯がある「すうじさがし」のレベル1・2から。⑤(あちこち飛ぶ)が気になるときは、まず「すうじさがし」で順に探す練習をしてから、「ナンバータッチ」で紙全体を見渡すのもおすすめです。
目の動かし方については、コラム「追従性眼球運動と跳躍性眼球運動とは?」、1日の量の目安は「毎日やったほうがいい? 1日どれくらい?」でご紹介しています。
おわりに:好きなことへの集中は、得意の芽
見落としが多い子が、好きなことにはぐっと集中して、声をかけても気づかないほど夢中になることがあります。大人を対象にした研究でも、ADHD のある人は、ない人に比べて、興味のあることに深く集中する「過集中」を経験すると答えることが多かったと報告されています。
注意が向きにくい場面がある一方で、注意がぐっと向く場面もある。見落としを減らす工夫と一緒に、その子が夢中になれることも大切にしていくと、それがいつか得意につながっていくかもしれません。
「よく見て」の前に、どんな見落とし方かを見てみる。そして、どうしたら見落としが減るかを、お子さんと一緒に探してみる。1枚のプリントが、そのきっかけになればうれしいです。
参考にした研究
- Treisman AM, Gelade G. A feature-integration theory of attention. Cognitive Psychology. 1980;12(1):97-136.
- Woods AJ, Göksun T, Chatterjee A, Zelonis S, Mehta A, Smith SE. The development of organized visual search. Acta Psychologica. 2013;143(2):191-199.
- Manly T, Anderson V, Nimmo-Smith I, Turner A, Watson P, Robertson IH. The differential assessment of children's attention: the Test of Everyday Attention for Children (TEA-Ch), normative sample and ADHD performance. Journal of Child Psychology and Psychiatry. 2001;42(8):1065-1081.
- Biederman J, Mick E, Faraone SV. Age-dependent decline of symptoms of attention deficit hyperactivity disorder: impact of remission definition and symptom type. American Journal of Psychiatry. 2000;157(5):816-818.
- Polatajko HJ, Mandich AD, Missiuna C, Miller LT, Macnab JJ, Malloy-Miller T, Kinsella EA. Cognitive orientation to daily occupational performance (CO-OP): part III—the protocol in brief. Physical & Occupational Therapy in Pediatrics. 2001;20(2-3):107-123.
- Reid R, Trout AL, Schartz M. Self-regulation interventions for children with attention deficit/hyperactivity disorder. Exceptional Children. 2005;71(4):361-377.
- Hupfeld KE, Abagis TR, Shah P. Living "in the zone": hyperfocus in adult ADHD. ADHD Attention Deficit and Hyperactivity Disorders. 2019;11(2):191-208.
参考にした資料
- 日本版WISC-IV刊行委員会(訳編). 日本版WISC-IV知能検査. 日本文化科学社; 2010.


