点図形のねらいと選び方。まちがい方から、つまずきが見えてきます

机の上の板に並んだピンに、子どもの指が黄色い輪ゴムをかけている手元
※画像はイメージです

点が並んだ見本の線を、となりの点に同じように写す「点図形」。放課後等デイサービスでも、よく使われている課題です。子どものリハビリの分野でも、図形を写す課題は、見る力と手の動きを確かめるときや、練習するときに使われています。シンプルな課題ですが、写した線をよく見ると、お子さんがどこでつまずいているのかの手がかりが、たくさん残っています。このコラムでは、点図形で使っている力、まちがい方から分かること、ななめの線が難しい理由、そしてレベルの選び方をご紹介します。

点図形で使っている力

点図形は、「見て、写す」だけの課題に見えます。けれども、1本の線を写すまでに、いくつもの力を順番に使っています。

1本の線を写すまで

  1. 位置をとらえる線がどの点から始まっているかを、数えたり、角や端を目印にしたりして見つける
  2. 向きをとらえるたて・よこ・ななめのどれで、どの点に向かっているかを見る
  3. 覚えておく見本から自分の紙へ目を移すあいだ、位置と向きを覚えておく
  4. 引いて止める始まりの点から、終わりの点で止まるように手を動かす
  5. 確かめる写した線と見本を見比べて、合っているかを確かめる

この流れのどこかでつまずくと、写した線にそのあとが残ります。だから、まちがい方を見ると、どこを手伝うとよいかの手がかりになります。

「点」があるから、取り組みやすい

何もない紙に図形を写すのは、思っている以上に難しい作業です。線の長さも、角度も、始まりの位置も、すべて自分で決めなければなりません。

点図形では、点が「ものさし」の代わりになります。始まりと終わりの点が決まっているので、線の長さや向きを、点を数えて確かめられます。点の数、線の本数、ななめの線があるかどうかで、難しさを少しずつ変えられるのも良いところです。字をまだ書かない子でも、点と点を結ぶだけなので取り組めます。

子どものリハビリでも使われる、図形を写す課題

子どものリハビリの分野、特に作業療法では、図形を写す課題が、評価と練習の両方に使われています。

評価では、たとえば、たての線・丸・十字・三角と、だんだん難しくなる図形を写してもらう検査(Beery VMI)があります。幼稚園の子どもを対象にした研究では、この検査で図形をよく写せた子ほど、文字も読みやすく写せる傾向が見られました。

練習としても、線や形を書く取り組みが行われています。この検査の点数が低めだった小学1年生に、短い期間、線や形を書く練習をした研究では、見る力の検査のうち手を動かして答える項目と、手先の動きの検査の点数が上がったと報告されています。

一方で、字を書く力のための取り組みを集めて調べた研究のまとめでは、字を書く練習そのものをふくまない取り組みは、効果が見られにくかったという結果も出ています。

点図形は、字を書くときに使う力の一部を、取り組みやすい形で使う課題です。けれども、字を書く練習の代わりになるものではありません。字を書くことが目当てなら、点図形とあわせて、実際に字を書く時間も大切にしてみてください。

まちがい方から見えること

写し終えたプリントは、答えと見比べて「合っている・まちがっている」を見るだけでなく、どんなふうにまちがえたかも見てみてください。よく見られるまちがい方を、6つにまとめました。

見本と、写した線を並べて、1つずれる・左右が反対・ゆるいななめが急になる・1本抜ける・交わる所で曲がる・点で止まらない、の6つのまちがい方を示した図
まちがい方の6つの例(赤い丸がまちがえた所)
まちがい方考えられること試せる工夫
① 1つずれる形はとらえているが、始まりの点の位置を数えるのが難しい始まりの点だけ、見本と写す欄の両方を指でさしてから写す
② 左右が反対右・左の位置の関係をとらえるのが難しい「まどの ほう」のように、身の回りの目印と結びつけて言葉にする
③ ゆるいななめが急になるななめの角度の違いを見分けるのが難しい「よこに 2つ、うえに 1つ」と、点を数えながら言葉にする
④ 1本抜ける・2回写すどこまで写したかを覚えておくのが難しい写し終えた見本の線に、小さく印をつけていく
⑤ 交わる所で曲がる重なった線を1本ずつ分けて見るのが難しい見本の線を1本ずつ指でなぞって、どこへ続くかを確かめてから写す
⑥ 点で止まらない見ながら手を動かして止めるのが難しい終わりの点を見ながら、ゆっくり引く

①のように、形は合っているのに全体がずれている場合は、「形をとらえる力」はしっかり働いています。こういうときは、形のほうではなく、始まりの位置を確かめる手伝いをすると、ぐっと写しやすくなることがあります。反対に、⑤や⑥が多いときは、線の数や交わりの少ないレベルに戻してみるのも一つの方法です。

線だけでなく、体の様子も見てみる

理学療法士としては、写した線と一緒に、写しているときの体の様子も見ておきたいところです。

  • 見本を見るたびに、頭ごと大きく動いている:目だけで見本と紙を行き来するのが、まだ大変なのかもしれません。目の動きについては、コラム「追従性眼球運動と跳躍性眼球運動とは?」でご紹介しています
  • 体が傾いている、紙を押さえていない:体が安定していないと、線も安定しにくくなります。姿勢と紙の押さえ方は、コラム「字がマスからはみ出す子」でくわしくご紹介しています
  • ななめの線のたびに、紙を回している:引きやすい向きに紙を回すのは、自分なりの工夫でもあります。どの向きの線で回すのかを見ておくと、苦手な向きが分かります

ななめの線は、なぜ難しい?

点図形でいちばんつまずきやすいのが、ななめの線です。

たて・よこの線、まっすぐなななめの線、2つ進んで1つ上がるゆるいななめの線の3つを、点の上に並べた図
右へいくほど、向きをとらえるのが難しくなる

じつは、私たちの目は、たてやよこの線に比べて、ななめの線の向きを見分けるのが苦手です。これは「斜め効果」と呼ばれていて、大人にも、動物にも見られることが知られています。

子どもを対象にした研究では、ななめの模様を見て「これと同じ」と選ぶことはできても、盤の上にこまを並べて、自分で同じななめを作るのは難しい、ということが分かっています。つまり、「同じだと分かる」ことと「自分で作れる」ことのあいだには、段差があるのです。

見本を見て「分かった」と言っているのに、写すとずれてしまう。そんなときは、分かっていないのではなく、この段差のところにいるのかもしれません。「よこに 2つ、うえに 1つ」のように、点を数えて言葉にすると、見て分かったことを、手の動きに置きかえる手がかりになります。

レベルの選び方

てんずうつしは、点の数と線の種類で、5つのレベルに分かれています。写した線のまちがい方から、次のように選んでみてください。

お子さんの様子試したいレベル
たて・よこの線でも、始まりの点がずれるレベル1(点は3×3、たて・よこだけ)
たて・よこは写せるが、ななめで迷うレベル2(点は4×4、ななめが少し)
ななめも写せるが、線が交わると迷うレベル3(点は5×5、交わりあり)
交わりも写せるレベル4(ゆるいななめあり)
線が多くても、どこまで写したかが分かるレベル5(点は8×8)

同じ「点を結んで写す」プリントでも、少しずつ使う力が違います。

プリント見本特徴
てんずうつしとなりに見本何かに見えにくい形が多く、点を見て写す力がそのまま出やすい
えの てんずうつしとなりに見本写し終えると絵になる。形を手がかりに、自分でまちがいに気づきやすい
てんつなぎ見本なし数字の順に点を結ぶ。写すのではなく、次の数字を探してつなぐ

まずは楽しく取り組みたいときは「えの てんずうつし」、まちがい方をよく見たいときは「てんずうつし」、と使い分けるのもおすすめです。

家で試す:まちがい方をメモしておく

まちがい方は、1回では分かりにくいこともあります。取り組むたびに、どのまちがいがあったかを書いておくと、変化が見えてきます(記入例)。

日にちレベルあったまちがい気づいたこと
10/62①③右下の点から始めるとずれる
10/132③「よこに1つ、うえに1つ」と言うと写せた
10/203④⑤交わる所で曲がった。1本抜けた
10/273⑤指でなぞってからだと写せた

まちがいは、「まちがい方から見えること」の①〜⑥の番号で書いておくと、すっきりします。

この例では、はじめは①と③が多く、言葉にする工夫で③が減っています。レベル3にしてからは、⑤の交わりが出てきましたが、指でなぞる工夫で写せるようになってきています。できたかどうかだけでなく、どんな工夫で写せたかを書いておくと、次に何を手伝うとよいかが分かります。

かかった時間も残したいときは、記録用紙の「タイムの きろく」が使えます。

プリントのほかにできること

点図形と同じ力は、紙の外でも使えます。

  • 輪ゴムと板(ジオボード):板に並んだピンに、見本と同じように輪ゴムをかけます。何度でもやり直せるので、まちがいを気にせず試せます
  • おはじきやブロックを、見本と同じマスに置く:線を引かずに、「点の位置」だけを写します。手の動きと切り分けて、位置をとらえることに集中できます
  • 床のマス目を、体で動く:床にテープでマス目を作り、見本の線のとおりに歩いたり、跳んだりします。「みぎに 2つ、まえに 1つ」を、自分の体で確かめられます

つながるプリント

点図形と同じように、位置や向きをとらえる力をねらった、MIRU LAB KIDS のプリントです。

見本を写すときに目と頭の中で起きていることは、コラム「黒板を写すのが遅いのは「書くのが苦手」だから?」でもご紹介しています。

おわりに

点図形は、点と線だけのシンプルな課題です。けれども、写した線には、お子さんが位置や向きをどうとらえているのかが、そのまま残ります。

○か×かだけでなく、どんなふうにまちがえたのか、どんな工夫で写せたのか。そこに目を向けると、1枚のプリントから分かることが、ぐっと増えます。お子さんが「できた」と感じられる手伝い方を見つける手がかりになれば、うれしいです。

参考にした研究

  • Appelle S. Perception and discrimination as a function of stimulus orientation: the "oblique effect" in man and animals. Psychological Bulletin. 1972;78(4):266-278.
  • Olson DR. Cognitive Development: The Child's Acquisition of Diagonality. New York: Academic Press; 1970.
  • Daly CJ, Kelley GT, Krauss A. Relationship between visual-motor integration and handwriting skills of children in kindergarten: a modified replication study. American Journal of Occupational Therapy. 2003;57(4):459-462.
  • Ratzon NZ, Efraim D, Bart O. A short-term graphomotor program for improving writing readiness skills of first-grade students. American Journal of Occupational Therapy. 2007;61(4):399-405.
  • Hoy MM, Egan MY, Feder KP. A systematic review of interventions to improve handwriting. Canadian Journal of Occupational Therapy. 2011;78(1):13-25.

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