点図形のねらいと選び方。まちがい方から、つまずきが見えてきます

点が並んだ見本の線を、となりの点に同じように写す「点図形」。放課後等デイサービスでも、よく使われている課題です。子どものリハビリの分野でも、図形を写す課題は、見る力と手の動きを確かめるときや、練習するときに使われています。シンプルな課題ですが、写した線をよく見ると、お子さんがどこでつまずいているのかの手がかりが、たくさん残っています。このコラムでは、点図形で使っている力、まちがい方から分かること、ななめの線が難しい理由、そしてレベルの選び方をご紹介します。
点図形で使っている力
点図形は、「見て、写す」だけの課題に見えます。けれども、1本の線を写すまでに、いくつもの力を順番に使っています。
1本の線を写すまで
- 位置をとらえる線がどの点から始まっているかを、数えたり、角や端を目印にしたりして見つける
- 向きをとらえるたて・よこ・ななめのどれで、どの点に向かっているかを見る
- 覚えておく見本から自分の紙へ目を移すあいだ、位置と向きを覚えておく
- 引いて止める始まりの点から、終わりの点で止まるように手を動かす
- 確かめる写した線と見本を見比べて、合っているかを確かめる
この流れのどこかでつまずくと、写した線にそのあとが残ります。だから、まちがい方を見ると、どこを手伝うとよいかの手がかりになります。
「点」があるから、取り組みやすい
何もない紙に図形を写すのは、思っている以上に難しい作業です。線の長さも、角度も、始まりの位置も、すべて自分で決めなければなりません。
点図形では、点が「ものさし」の代わりになります。始まりと終わりの点が決まっているので、線の長さや向きを、点を数えて確かめられます。点の数、線の本数、ななめの線があるかどうかで、難しさを少しずつ変えられるのも良いところです。字をまだ書かない子でも、点と点を結ぶだけなので取り組めます。
子どものリハビリでも使われる、図形を写す課題
子どものリハビリの分野、特に作業療法では、図形を写す課題が、評価と練習の両方に使われています。
評価では、たとえば、たての線・丸・十字・三角と、だんだん難しくなる図形を写してもらう検査(Beery VMI)があります。幼稚園の子どもを対象にした研究では、この検査で図形をよく写せた子ほど、文字も読みやすく写せる傾向が見られました。
練習としても、線や形を書く取り組みが行われています。この検査の点数が低めだった小学1年生に、短い期間、線や形を書く練習をした研究では、見る力の検査のうち手を動かして答える項目と、手先の動きの検査の点数が上がったと報告されています。
一方で、字を書く力のための取り組みを集めて調べた研究のまとめでは、字を書く練習そのものをふくまない取り組みは、効果が見られにくかったという結果も出ています。
点図形は、字を書くときに使う力の一部を、取り組みやすい形で使う課題です。けれども、字を書く練習の代わりになるものではありません。字を書くことが目当てなら、点図形とあわせて、実際に字を書く時間も大切にしてみてください。
まちがい方から見えること
写し終えたプリントは、答えと見比べて「合っている・まちがっている」を見るだけでなく、どんなふうにまちがえたかも見てみてください。よく見られるまちがい方を、6つにまとめました。

| まちがい方 | 考えられること | 試せる工夫 |
|---|---|---|
| ① 1つずれる | 形はとらえているが、始まりの点の位置を数えるのが難しい | 始まりの点だけ、見本と写す欄の両方を指でさしてから写す |
| ② 左右が反対 | 右・左の位置の関係をとらえるのが難しい | 「まどの ほう」のように、身の回りの目印と結びつけて言葉にする |
| ③ ゆるいななめが急になる | ななめの角度の違いを見分けるのが難しい | 「よこに 2つ、うえに 1つ」と、点を数えながら言葉にする |
| ④ 1本抜ける・2回写す | どこまで写したかを覚えておくのが難しい | 写し終えた見本の線に、小さく印をつけていく |
| ⑤ 交わる所で曲がる | 重なった線を1本ずつ分けて見るのが難しい | 見本の線を1本ずつ指でなぞって、どこへ続くかを確かめてから写す |
| ⑥ 点で止まらない | 見ながら手を動かして止めるのが難しい | 終わりの点を見ながら、ゆっくり引く |
①のように、形は合っているのに全体がずれている場合は、「形をとらえる力」はしっかり働いています。こういうときは、形のほうではなく、始まりの位置を確かめる手伝いをすると、ぐっと写しやすくなることがあります。反対に、⑤や⑥が多いときは、線の数や交わりの少ないレベルに戻してみるのも一つの方法です。
線だけでなく、体の様子も見てみる
理学療法士としては、写した線と一緒に、写しているときの体の様子も見ておきたいところです。
- 見本を見るたびに、頭ごと大きく動いている:目だけで見本と紙を行き来するのが、まだ大変なのかもしれません。目の動きについては、コラム「追従性眼球運動と跳躍性眼球運動とは?」でご紹介しています
- 体が傾いている、紙を押さえていない:体が安定していないと、線も安定しにくくなります。姿勢と紙の押さえ方は、コラム「字がマスからはみ出す子」でくわしくご紹介しています
- ななめの線のたびに、紙を回している:引きやすい向きに紙を回すのは、自分なりの工夫でもあります。どの向きの線で回すのかを見ておくと、苦手な向きが分かります
ななめの線は、なぜ難しい?
点図形でいちばんつまずきやすいのが、ななめの線です。

じつは、私たちの目は、たてやよこの線に比べて、ななめの線の向きを見分けるのが苦手です。これは「斜め効果」と呼ばれていて、大人にも、動物にも見られることが知られています。
子どもを対象にした研究では、ななめの模様を見て「これと同じ」と選ぶことはできても、盤の上にこまを並べて、自分で同じななめを作るのは難しい、ということが分かっています。つまり、「同じだと分かる」ことと「自分で作れる」ことのあいだには、段差があるのです。
見本を見て「分かった」と言っているのに、写すとずれてしまう。そんなときは、分かっていないのではなく、この段差のところにいるのかもしれません。「よこに 2つ、うえに 1つ」のように、点を数えて言葉にすると、見て分かったことを、手の動きに置きかえる手がかりになります。
レベルの選び方
てんずうつしは、点の数と線の種類で、5つのレベルに分かれています。写した線のまちがい方から、次のように選んでみてください。
| お子さんの様子 | 試したいレベル |
|---|---|
| たて・よこの線でも、始まりの点がずれる | レベル1(点は3×3、たて・よこだけ) |
| たて・よこは写せるが、ななめで迷う | レベル2(点は4×4、ななめが少し) |
| ななめも写せるが、線が交わると迷う | レベル3(点は5×5、交わりあり) |
| 交わりも写せる | レベル4(ゆるいななめあり) |
| 線が多くても、どこまで写したかが分かる | レベル5(点は8×8) |
同じ「点を結んで写す」プリントでも、少しずつ使う力が違います。
| プリント | 見本 | 特徴 |
|---|---|---|
| てんずうつし | となりに見本 | 何かに見えにくい形が多く、点を見て写す力がそのまま出やすい |
| えの てんずうつし | となりに見本 | 写し終えると絵になる。形を手がかりに、自分でまちがいに気づきやすい |
| てんつなぎ | 見本なし | 数字の順に点を結ぶ。写すのではなく、次の数字を探してつなぐ |
まずは楽しく取り組みたいときは「えの てんずうつし」、まちがい方をよく見たいときは「てんずうつし」、と使い分けるのもおすすめです。
家で試す:まちがい方をメモしておく
まちがい方は、1回では分かりにくいこともあります。取り組むたびに、どのまちがいがあったかを書いておくと、変化が見えてきます(記入例)。
| 日にち | レベル | あったまちがい | 気づいたこと |
|---|---|---|---|
| 10/6 | 2 | ①③ | 右下の点から始めるとずれる |
| 10/13 | 2 | ③ | 「よこに1つ、うえに1つ」と言うと写せた |
| 10/20 | 3 | ④⑤ | 交わる所で曲がった。1本抜けた |
| 10/27 | 3 | ⑤ | 指でなぞってからだと写せた |
まちがいは、「まちがい方から見えること」の①〜⑥の番号で書いておくと、すっきりします。
この例では、はじめは①と③が多く、言葉にする工夫で③が減っています。レベル3にしてからは、⑤の交わりが出てきましたが、指でなぞる工夫で写せるようになってきています。できたかどうかだけでなく、どんな工夫で写せたかを書いておくと、次に何を手伝うとよいかが分かります。
かかった時間も残したいときは、記録用紙の「タイムの きろく」が使えます。
プリントのほかにできること
点図形と同じ力は、紙の外でも使えます。
- 輪ゴムと板(ジオボード):板に並んだピンに、見本と同じように輪ゴムをかけます。何度でもやり直せるので、まちがいを気にせず試せます
- おはじきやブロックを、見本と同じマスに置く:線を引かずに、「点の位置」だけを写します。手の動きと切り分けて、位置をとらえることに集中できます
- 床のマス目を、体で動く:床にテープでマス目を作り、見本の線のとおりに歩いたり、跳んだりします。「みぎに 2つ、まえに 1つ」を、自分の体で確かめられます
つながるプリント
点図形と同じように、位置や向きをとらえる力をねらった、MIRU LAB KIDS のプリントです。
- てんずうつし・えの てんずうつし:このコラムでご紹介した点図形です
- はんぶん ぬりえ:左右が反対になる形を考えてぬる。②の左右の関係に近い取り組みです
- てんつなぎ:数字の順に点を結ぶ。次の点を目で探す力を使います
見本を写すときに目と頭の中で起きていることは、コラム「黒板を写すのが遅いのは「書くのが苦手」だから?」でもご紹介しています。
おわりに
点図形は、点と線だけのシンプルな課題です。けれども、写した線には、お子さんが位置や向きをどうとらえているのかが、そのまま残ります。
○か×かだけでなく、どんなふうにまちがえたのか、どんな工夫で写せたのか。そこに目を向けると、1枚のプリントから分かることが、ぐっと増えます。お子さんが「できた」と感じられる手伝い方を見つける手がかりになれば、うれしいです。
参考にした研究
- Appelle S. Perception and discrimination as a function of stimulus orientation: the "oblique effect" in man and animals. Psychological Bulletin. 1972;78(4):266-278.
- Olson DR. Cognitive Development: The Child's Acquisition of Diagonality. New York: Academic Press; 1970.
- Daly CJ, Kelley GT, Krauss A. Relationship between visual-motor integration and handwriting skills of children in kindergarten: a modified replication study. American Journal of Occupational Therapy. 2003;57(4):459-462.
- Ratzon NZ, Efraim D, Bart O. A short-term graphomotor program for improving writing readiness skills of first-grade students. American Journal of Occupational Therapy. 2007;61(4):399-405.
- Hoy MM, Egan MY, Feder KP. A systematic review of interventions to improve handwriting. Canadian Journal of Occupational Therapy. 2011;78(1):13-25.


